よいこの弁当

小学生の時に、「よいこ」ってあだ名の友達がいた。本当の名前は「横井」だ。「よこい」が「よいこ」。みんな彼のことを「よいこ」って呼んでいた。

よいこの家は、最近はあまり見かけなくなった、町の小さな電気屋さんだった。商店街にある店舗から離れた団地によいこ家族は住んでいた。

よいこの家にはよく遊びに行って、一緒にプラモデルを作ったり、ゲームをやったりして遊んでいたのだが、よいこのお父さんにもお母さんにも一度も会ったことはなかった。よいこの両親は、朝早くから夜まで、きっとお店で一生懸命働いていたのだろう。

ある日の遠足のことだ。
お昼になって、みんなリュックからお弁当を出して食べ始めたのだが、よいこは僕たちに背を向けて何かを食べていた。

「よいこ!何で後ろ向いて食べてんだよ?」

よいこのお弁当はマクドナルドのビッグマックとフライドポテトだった。

僕たちは、それぞれ手にした母親手作りの弁当がとても野暮ったく感じ、よいこがの弁当がとてもオシャレでかっこいいものに見えた。

よいこは「へへ、いいだろ?俺くらいになるとこんなもんよ!」とドヤ顔であったのだが、そのドヤ顔が強がりであることを、周りのみんなは一瞬にして悟った。しかし、子供なので、みんなかける言葉を見つけられず、変な空気になった。

忙しい、よいこのお母さんは、よいこのお弁当を作るだけの時間も、もしかしたら体力的にも余裕がなかったのかもしれない。遠足の日の朝に、どんな思いでマクドナルドの紙袋を渡したのだろう?そして、よいこはどんな気持ちでそれを受け取ったのだろうか。

たかがお弁当だし、それぞれの家庭の事情もあるだろう。幸せの形も自由だし、ライフスタイルも様々だ。正解なんてない。誰も悪くない。ただ、今もあのときの「よいこ」の強がった、少しひきつった自慢気な顔を覚えている。


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NHKの「ドキュメント72時間」って番組が好きで、さっき録画してあった「福岡・中洲 真夜中の保育園」. の回を見ていたら、「よいこ」のことを思い出したのだ。よいこ、お前にとってのビッグマックが、寂しい思い出トリガーアイテムになっていないことを願うばかりだ。



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なんだろね、「親の手を借りないのがかっこいい」みたいな、子供ならではの勘違いというかね(笑)
全然自立していないのだけれど、ちょっと大人っぽい感じ。

『72時間』は面白いよね。
ダラダラしていなくて、30分でまとめる潔さが良いです!
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濃紺

Author:濃紺
◆1971年生まれ。廃人寸前からサラリーマンへ奇跡の転身。 音楽好き。愛すべき80年代カルチャーを礎に、現在を生き未来を感じたい。東京→仙台→札幌→福岡。

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