洋服を着た犬

Sunday morning
いつもの公園。

「その猫、君が飼っているのかい?」
「いや、飼っている訳じゃなくて、こいつはこの公園に住んでいる…俺の友達だ」

20091019121307.jpg

オランダから来たというAmirとの会話は、そんな他愛ない話題から始まった。ロック好きで、油絵を描く彼と、カタコトのBroken Englishで、いろいろなことを話した。アート、音楽、東洋と西洋の文化や歴史のこと、食べ物や女の子のこと。お互い、Nine inch nailsと、アンディ・ウォホールのファンということがわかり、意気投合したのだ。

「よかったら朝食を一緒に食べないか?」
私は公園の近くにある行きつけの超高級店、YOSHINOYAにて、彼にGYU-DONを奢ろうと思ったのだが、彼はベジタリアンであった。ベジタリアンである彼にとって、値段が手頃な食事をとることにおいては、日本はあまり優しい国ではないらしい。

自動販売機で、彼はコーラを、私はコーヒーを買い、並んでベンチに腰掛けた。彼はポケットからマルボロの箱を出して、私に一本勧めた。私は「ありがとう、でも自分のがあるから大丈夫」と、お互い自分のタバコに火をつけて、煙を吐き出した。

文法や発音が目茶苦茶でも、話していればなんとかなるものだ。最初は頭の中で考えながら話していたのだが、30分も話していると、お互い冗談も言えるようになり、ゲラゲラ笑った。吐き出しているのが、タバコの煙でなければ、我々はもっとバカ笑いをしていたことだろう。オランダはアレがアレな国なので、尚更そう思った。

日曜日の朝の公園には、犬の散歩の人が多い。
Amirは、唐突に向こう側を指さして言った。

「Look ノウコン! 犬が服を着ている!」

洋服を着(せられ)ているミニチュア・ダックスフントが、トコトコと歩いている。私にとっては見慣れた光景だが、彼にとっては、犬が服を着ているのが、とてもストレンジかつファニーに思えるらしい。

「何故犬が服を?」
「…日本の犬は、寒がりなのさ。日本には豊かな四季があってだな、冬になると、犬も人と同じように厚着をするんだ。あと一月も経てば、ダウンジャケットを着込んで、マフラーを巻いた犬も出て来るんだ」
「そうか」

そこに『裸の』柴犬が通った。
「あの犬は…服を着ないのか?」
「あれは寒さに強い種類なんだ」
「そうか」

Amirは頷いて、コーラを飲み干すと、手にしたまま、火を点けていないマルボロを指先でくるくる回していたのだが、ふいにその動きをピタリと止めた。

「なあ、ノウコン…ずっと君の足元で寝そべっているその猫…君の友達は、服を着ていないが寒くないのか?」
「ああ…こ、こいつは大丈夫だ。上等な毛皮を…着ているからな」

Brokenながらも饒舌に(?)話していた私が口ごもったのを、彼は見逃さなかった。彼はその大きな目で私をじっと見つめつつ、おもむろに歌い出した。

「You~You~♪」
「何の歌だい?」
「You~LIAR(嘘つき)♪」

20091019121304.jpg

そして、二人でゲラゲラと笑ったのだった。私は一応「ソーリー」と謝罪した。彼は笑ったまま握手を求めてきた。

「君と話せて楽しい時間を過ごせたよ。ありがとう」
お決まりの文句かもしれないが、嬉しかった。

「君の旅が、今日一日が素敵な日であるよう」私は彼の手を強く握り返した。

彼は「サンキュー、グッドラック」と言い、我々は別れた。少し歩いて振り返ると、彼は私とは逆方向に後ろ向きで歩きながら手を振っていた。

グッドラック…幸運を。
良い言葉だなと思った。
スポンサーサイト

コメント

楽しいね

いい日曜日だったね

ずいぶん猫ちゃんの多い公園なのね(´д`;)ハァハァ
しかもみんな可愛い子ちゃんばっかりだし…カワユスな猫ちゃんたぶらかしまくってけしからん!

ずーるーいーアーターシーもー(´д`;)ハァハァ

■まささん
朝から楽しかったので、ちょっと得した気分になりました。


■櫻利さん
お、おひさしぶり。
最近、猫さんにはものすごーくモテモテでございます。
何がそうさせているのかは、まったくわかりませんが、きっと猫さんアンテナが、私の何か感知しているのでしょう。
猫さんは一匹ずつ性格も違っていて、決して一筋縄ではいかず、いつもいろいろ発見があります。猫道は奥が深いですな!
非公開コメント

haunted days

09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

profile

濃紺

Author:濃紺
◆1971年生まれ。廃人寸前からサラリーマンへ奇跡の転身。 音楽好き。愛すべき80年代カルチャーを礎に、現在を生き未来を感じたい。東京→仙台→札幌→福岡。

Twitter

archive

10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06 

search