obscure
久しぶりに本を読もうと思いましてね。ブックオフの105円コーナーをウロウロしていた。
特に好きな作家もいないし、「あまり小難しい…疲れるものは読みたくない」そんな気分なので、チョイスは適当である。
最初から「本を4冊買おう」と思っていた。
4冊に理由はないが、最初からそう決めていた。
ただ何となく、その本のタイトル、表紙の絵が気に入ったから。
3冊まではあっさり決まったのだが、残りの1冊…興味をそそる最後の1冊が、なかなか決まらない。
方向性を変えよう---私はある1つのコンセプトを立てた。
「普段なら絶対に手を出さない本を読んでみよう」という、チャレンジ精神とガッツ溢れる試みである。ok牧場!
音楽とか映画もそうなんだけれど、何気ない切っ掛けで手に取ったものが、思わぬところで「自分の中で大当たり」することはたまにある。また、最初は「この人とは絶対に気が合わないだろうなあ」と思った人物とよくよく話をしてみると、意外なところで意気投合し、末永く友人関係を築くこともたまにある。私は最後の1冊に、そんなミラクルを期待したのだった。
「普段なら絶対に手を出さない…普段なら絶対に手を出さない…」
呪文のように呟きながら手に取った1冊。
こちらが、その本の裏表紙である。
どうだ?普段の私なら「普段なら絶対に手を出さない」こと間違いない。
私はその足で、冷房の効いた某コーヒーチェーン店に入店。
アイスコーヒーを啜りながらページを捲った。
ところがというか、やはりというべきか、10ページ読んだ時点でイライラしてきた。
よくわからんが、イライラする。
何もかもが、私にとってはイラつくのだ。
ある意味これも「ミラクル」なのだろうか?
30ページ読んだ時点で、登場人物全員の尿道に爪楊枝とマッチ棒を詰めたくなった。
50ページにさしかかる頃には、登場人物全員のお尻の穴に、その歳の数だけフリスクの粒を詰め込みたくなった。下品ですまない。でも、これが本当の気持ちなんだ。言いたいことも言えないこんな世の中じゃ…ポイズン。
私は本を閉じて、タバコに火を点けた。
隣のテーブルでは、3人組のギャル達が、先週の合コンの反省会(?)をしている。
全員20歳そこそこくらいだろうか?いずれも目の周り真っ黒のアイメイクを施しているが、ゴシック・パンクの人達ではなく、至って普通の「今時のギャル」といった感じだ。
「だってさーアレは無理、絶対ムリムリ」
「ありえないよねー」
「でもさ…レンアイ…したいよね」
「どこかにさー、いい人いないかなー」
「どこかって?」
「だから、どこか」
その会話の着地点を見つけるのは、一休さんでも困難そうであり、私にとっては全くもって、どうでもいいことこの上ないはずなのだが、彼女達の会話から醸し出される空気感には、ある意味とても純粋な何かが宿っているような気がして仕方なかった。
さっき閉じたばかりの本を、もう一度開いて、パラパラと捲ってみる。
やはりイライラする。
ぼんやりと活字を追いながら、その理由を考えてみたが、結局よくわからなかった。
ただ、1つだけわかったことは、「この本は、私の為に書かれた本ではない」ということだけだ。
さらに視点を少しずらしてみよう。
37歳の男が、これを読んで、感動したり共感しちゃうのは、それはそれで何か違うような気がするのだ。そこには絶対的な正解も不正解もないが、『私は』そう思った。
年齢を重ねるごとに、失ってしまった何か、捨てざるを得ない何か。
時代と共に変容する価値観。こだわり。常識。
決して全てを否定する気はないが、全てを迎合する気もない。
私はタバコを灰皿に擦り付けながら、本を閉じた。
この本を私が開くことは2度とないのだが、きっとそれで良いのだと思う。
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コメント
2009/08/24 02:36 by キスゲ URL 編集
そうしようかとも思ったのですが…街角のティッシュ配りの子にポケットティッシュをもらったので、お返しにこの本をあげました。
2009/08/25 00:21 by 濃紺 URL 編集